中国OEMにおける商標侵害を防ぐ方法|判例と対策も紹介

こんにちは!

中国輸入代行「誠」のパンダの社長こと酒井(@makoto1688)です^^

 

子侍くん
中国でOEMをはじめようと思ってるんですが、商標侵害って正直よくわからないんです...工場が提案してくれたデザインをそのまま使って大丈夫なのか不安ですし、日本と中国の両方で商標登録が必要なのかも迷っています。何から気をつければいいんでしょうか?

今回は、こちらのご質問にお答えします。

 

中国OEMに関するtweet

アリエクの商品レビュー。気をつけないといけないのは、評価者は日本人だけではないこと。中国からは購入できませんが、ロシアを中心に、欧米・中東・アジアからも購入できます。各国価値観が違いますし、評価がよくても日本人的には「×」なこともあります。日本人の基準もさまざまですが。

この記事は、長年、中国OEM代行を営むパンダの社長が書いています。

パンダの社長

この記事では、初心者でも理解しやすいように、商標の基本から防止策までをまとめました!

 

それでは、見ていきましょう。

 

はじめに:商標の重要性

商標は、自分の商品やブランドを守るための大切な権利です。

逆に、他人の商標を侵害すると販売停止や損害賠償につながる危険もあります。

OEMでは製造段階から商標の扱いを意識することが欠かせません。

 

 

詳しくみていきましょう。

 

商標とは?

商標とは、商品やサービスをほかと区別するための名前やマーク、ロゴなどのことです。

たとえば「NIKE」のロゴや、飲料の「コカ・コーラ」の文字デザインも商標です。

商標は国ごとに登録され、その国の法律で保護されます。

登録された商標は、権利者が独占的に使えるため、他人は許可なく使用できません。

つまり、自分の商品名やロゴを守るための“盾”であり、同時に他人の権利を侵害しないための“ルール”でもあります。

 

OEMで商標侵害が起こる背景

OEMでは、工場がすでに持っているデザインやロゴを使ったり、サンプルを参考にしたりすることがあります。

このとき、そのデザインや名前が既に他人の商標として登録されている場合、知らないうちに侵害してしまうのです。

また、中国の工場が「問題ない」と言っても、日本や他国では商標権が存在するケースもあります。

つまり「知らなかった」では済まないのが商標侵害の怖いところです。

 

事前に商標を調べる方法

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)

商標侵害を防ぐには、製品名やロゴを使う前に商標検索をおこなうことが大切です。

日本では「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」、中国では「中国商標網」などの公式サイトで調べられます。

検索は自分でもできますが、不安があれば専門の弁理士や商標調査サービスを利用すると安心です。

特に、似た名前やロゴが登録されていないかまで確認するのがポイントです。

 

自分の商標を登録するメリット

OEMで長く販売する商品なら、自分の商標を登録しておくことをおすすめします。

商標を登録すれば、他人が同じ名前やロゴを勝手に使うのを防げます。

また、商標登録は中国と日本の両方で行うことで、現地生産時のリスクも減らせます。

早めに登録しておくことで、模倣品対策にもなります。

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OEM製品は商標登録すべき3つの理由

OEMをするとき、自分のブランド名をつけて販売することになります。

つまり、その名前が他人の商標を侵害していたら、販売停止や損害賠償のリスクがあるのです。

逆に言えば、自分で商標登録しておけば、他人から真似される心配が減ります。

商標は“ブランドの身分証明書”のようなもの。

商品づくりを始める前に、必ずチェックしておきましょう。

 

 

詳しくみていきましょう。

 

理由①:他社からブランドを守るため

商標登録をしておくと、他社が同じ名前や似た名前を使えなくなります。

自分のブランドを守る「法的な権利」が手に入るということです。

登録がない状態だと、後から似た商品を出されても文句を言えません。

せっかく育てたブランドが真似され、信用を失うケースもあります。

つまり、商標登録は“ブランドを守る盾”のような存在です。

 

理由②:安心して販売を続けるため

商標を登録しておくと、他人の商標をうっかり侵害するリスクを避けられます。

もし他人の権利を侵害していたら、販売停止や損害賠償の可能性もあります。

一度トラブルになると、商品ページ削除や返品対応で大きな損失になることも。

登録しておけば、安心して長く販売を続けられます。

“安心してOEMを育てていくための基礎”が、商標登録なのです。

 

理由③:中国での商標トラブルを防ぐため

中国では「先に申請した人が優先」という先願主義が採用されています。

そのため、日本で商標を持っていても、中国で他人に先に取られることがあります。

最悪の場合、自分のブランドを使って輸出・販売できなくなることも。

また、製造元が勝手に登録して“商標を人質にする”事例もあります。

中国でも商標を登録しておくことが、トラブル防止の最大のポイントです。

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中国OEMで実際に起きた商標侵害の判例

商標侵害は「自分には関係ない」と思っていても、OEMビジネスでは意外と身近に起きています。

ここでは、中国OEMで実際にあった事例を5つ紹介し、なぜ問題になったのかを初心者向けにわかりやすく解説します。

 

 

詳しくみていきましょう。

 

PRETUL事件(亜環事件)

PRETULという工具ブランドの製品を、中国の工場が外国企業の依頼で製造しました。

この製品はすべて輸出用で、中国国内では販売されませんでした。

依頼した外国企業は輸出先の国で商標権を持っていました。

中国の最高裁は、この場合は中国国内で商標を使ったことにならないと判断しました。

つまり、輸出専用で正しい権利者からの依頼なら、侵害にはならないという結論です。

ただし、これはあくまで「商標権の確認をしっかりしている」ことが前提です。

  • 事件番号:(2014) 民提字第38号
  • 判決日:2015年11月26日

中国国内では商標とっていなかったことから、工場が使用し販売。中国の裁判所は問題なしとした判例です。

 

DONG FENG事件(東風事件)

中国の自動車部品メーカーが、海外企業の依頼で商標付き部品をOEM製造しました。

依頼企業は輸出先国で商標権を持っていました。

最高裁はPRETUL事件の基準を認めつつ、製造側には「本当に商標権があるのか確認する義務」があると判断しました。

つまり、依頼があっても商標の権利関係を調べないと、安全とはいえません。

工場が調べずに作った場合は、侵害の責任を問われる可能性があります。

この判例はOEM製造側の注意義務を明確にした点が重要です。

OEMを依頼する側も、工場がきちんと確認してくれているか注意が必要です。

  • 事件番号:(2016) 最高法民再第339号(再審事件)
  • 判決時期:2017年12月ごろ

PRETUL事件と同じ理由で、中国の裁判所は問題なしとした判例です。

 

HONDA事件(本田事件)

中国の工場が「HONDAKIT」というロゴを付けたバイク部品を製造しました。

見た目や名前がホンダの商標「HONDA」に非常に似ていました。

この製品は輸出用でしたが、中国国内の人もネットや展示会などで見る可能性がありました。

最高裁は、消費者が誤解する恐れがあるとして商標侵害を認定しました。

PRETULやDONG FENGのような「輸出専用ならOK」という考えは通用しませんでした。

似ているだけでも侵害になる場合があることを示した重要な事例です。

OEMでもロゴや名前の類似性には特に注意が必要です。

  • 事件番号:(2019) 最高法民再138号
  • 判決時期:2019年9月ごろ

HONDAやエルメスやNIKEなど、世界的な有名ブランドは生産国で商標を取得していなくても商標権を認められる判例です。

 

PEAK事件(上海知識産権法院裁判)

中国ブランド「PEAK」に似た「PEAK SEASON」というラベルを付けたスニーカーが問題になりました。

このスニーカーは海外販売用にOEM製造されました。

しかし、ネットショップ経由で中国国内の消費者も商品ページを見ることができました。

裁判所は、これは中国国内で商標を使ったのと同じだと判断しました。

つまり、インターネット経由で国内からアクセスできるだけでも商標侵害とされる可能性があります。

この判例は、オンライン販売の時代に特有のリスクを示しています。

OEM製造でも、ネット上での露出を考えて商標を確認する必要があります。

  • 事件番号:(2016) 沪73终37号(終審判決)

HONDAほど認知されていなくても、中国国内で多く認知されているブランドは、中国では侵害判決になる事例です。

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商標侵害を防ぐためには?対策を解説

中国OEMは魅力的ですが、商標トラブルのリスクがあります。

ここでは、初心者でもすぐ実践できる商標侵害の防止策を7つ紹介します。

紹介はしていますが、経験がなければ弁理士に相談することが最もをリスクを回避できますよ!無料で相談したい場合は、各都道府県にある知財総合支援窓口または商工会へ相談することですよ!

 

 

詳しくみていきましょう。

 

製品名やロゴを決める前に商標検索をする

商品名やロゴを決めるときは、まず商標検索サイトで調べることが大切です。

日本では「J-PlatPat」、中国では「中国商標網」などで無料検索が可能です。

似た名前やデザインが登録されていないかもチェックしましょう。

検索だけで不安なら、専門家に依頼して調査してもらうのもおすすめです。

これだけで多くのトラブルを未然に防げます。

 

中国と日本の両方で商標登録をする

販売予定が日本だけでも、中国でOEM製造するなら中国でも商標登録しておくと安心です。

なぜなら、中国では「商標の先取り」がよくあるからです。

現地で商標を取られてしまうと、製造や輸出ができなくなる可能性もあります。

登録には時間がかかるので、製造スタート前に申請を進めておきましょう。

早めの登録がブランドを守る第一歩です。

 

契約書に商標使用ルールを明記する

OEM契約書には、商標やロゴの使用方法を必ず書き込みましょう。

「無断で別ブランドの商標を使わない」などの禁止事項をはっきりさせます。

書面で残すことで、万一トラブルになったときに証拠になります。

工場側の認識不足や勝手な判断を防ぐ効果もあります。

契約書は翻訳版も作っておくとさらに安心です。

 

デザインやサンプルの出所を確認する

工場から提案されたデザインやサンプル品の出所は必ず確認しましょう。

他社製品をそのまま流用している可能性もあります。

知らずに使えば、依頼者側も侵害の責任を負うことになります。

オリジナルデザインを依頼する場合も、著作権や商標に触れないか事前に確認します。

確認作業を怠らないことで、不要なリスクを減らせます。

 

類似デザインやキャラクターにも注意する

有名キャラクターやブランドに似たデザインは避けましょう。

商標だけでなく著作権侵害の可能性もあります。

「ちょっと似ているだけ」でも訴えられるケースはあります。

特にキャラクターやスポーツチームのロゴは権利が厳しく管理されています。

オリジナリティのあるデザインを使うことが安全策です。

 

製造前のサンプルチェックを徹底する

製造前に完成品サンプルを取り寄せて、ロゴやデザインを細かく確認しましょう。

製造途中で勝手に変更されるケースもあるからです。

商標やデザインの部分は写真で記録を残しておくと安心です。

不安があれば製造を止めて修正を依頼します。

早い段階で気づけば、大きな損失を防げます。

 

輸出国の商標事情も調べておく

中国からの輸出先の国でも商標権を確認しましょう。

輸出先で商標侵害になると、現地で販売できなくなります。

場合によっては現地税関で荷物が差し止められることもあります。

商標は国ごとに権利が独立しているため、日本と中国だけ確認しても不十分です。

販売予定国の商標情報まで調べておくことが、長期的なビジネスの安定につながります。

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商品侵害を受けたら?対応手順を解説

どんなに注意していても、他社が自分のブランド名やロゴを真似してくることがあります。

そんなときに慌てず対応できるよう、基本的な手順を知っておきましょう。

対応の流れを知っていれば、被害を最小限に抑えることができます。

 

 

詳しくみていきましょう。

 

手順①:証拠を集める

まずは、相手が商標を侵害している証拠をしっかり残しましょう。

商品画像、販売ページ、購入履歴、ロゴの使用状況などをスクリーンショットで保存します。

後から削除されることもあるため、できるだけ早くデータを確保するのがポイントです。

証拠は弁護士やプラットフォームへの報告に使える大切な資料になります。

焦らず、冷静に「何をどこで使われたか」を記録することが大切です。

 

手順②:販売サイトやプラットフォームに通報する

証拠を集めたら、次に販売サイトやECプラットフォームへ通報します。

多くのサイトでは、商標権侵害を報告する専用フォームが用意されています。

正しく証拠を提出すれば、販売停止やページ削除などの対応が取られます。

特にAmazonやアリエクスプレスなどは、権利者の申し立てを重視しています。

自分の権利を主張する第一歩として、早めに申請をおこないましょう。

 

手順③:専門家に相談する

通報だけでは解決しない場合、弁理士や弁護士に相談するのが安心です。

法的な手続きや、相手との交渉を専門家に任せることでスムーズに進みます。

必要であれば、損害賠償や差し止め請求をおこなうことも可能です。

専門家のサポートを受けることで、感情的な対立を避けながら確実な解決を図れます。

「プロに任せる勇気」も、ブランドを守る大切な判断です。

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まとめ

  • 中国OEMでは「知らなかった」では商標侵害が免れないリスクがあります。
  • 製造・販売前に日本と中国両国で商標検索・確認を行うことが重要です。
  • ロゴや商品名を決める前に商標登録を検討し、ブランド保護の土台を作りましょう。
  • OEM契約書に商標使用・権利の明記をし、デザイン・サンプルの出所を必ず確認しましょう。
  • 輸出先の国も含めて商標事情を調べ、小さな確認を積み重ねることで大きなトラブルを回避できます。

ご質問、いつも歓迎です!本日もお読みいただき、ありがとうございました^^

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