中国OEMでは契約書は必須なのか?契約書作成のポイントと注意点を解説

こんにちは!

中国輸入代行「誠」のパンダの社長こと酒井(@makoto1688)です^^

 

子侍くん
中国でのOEMを考えています。すべての工場で、契約書は必要なのでしょうか。必要な場合、どのようなことに注意したらよいでしょうか。

今回は、こちらのご質問にお答えします。

 

中国OEMに関するtweet

契約書。好んで読む人は多くはないと思いますけれど、自分を守るためのものなので目を通しておいた方がよいです。特に、OEMや業務提携など企業間契約なら、雛形を作る側になることもありますし、自社にとって有利になるように普段からさまざまな契約書(スマホ契約含む)を読んでおいて損はないです。

この記事は、長年、中国輸入代行を営むパンダの社長が書いています。

パンダの社長
自力でOEMをやるなら契約書はあるべきですよ。本当にいろいろありますから。

 

それでは、見ていきましょう。

 

はじめに:中国輸入でのOEM契約について

中国の工場とオリジナル商品を作る「OEM」にチャレンジしたいけれど、契約書って本当に必要なの?と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

はじめに、中国OEMにおける契約書の必要性や注意点を、初心者にもわかりやすく解説します。

 

 

詳しくみていきましょう。

 

中国OEMに契約書は必要なのか?

OEMをおこなう際、契約書は必須と考えましょう。

言った言わないのトラブルを避けるために、書面での取り決めはとても重要です。

仕様、納期、支払い条件、不良品対応などは必ず明文化するべきです。

特に日本語と中国語のバイリンガル契約書が理想です。

法律的な拘束力を持たせるためにも、サインや印鑑の扱いにも注意が必要です。

契約書の雛形を提示していただける工場も多くありますよ!ですが、個人事業や小規模事業者で契約書締結をしたいという方は、ほぼいらっしゃらないです。理由はわかりませんが、「契約」を毛嫌い?面倒くさい?と思っている方も少なからずいらっしゃるのかも?しれません。

 

ライセンス契約との違いは?

OEM契約とライセンス契約は、目的が異なります。

OEM契約は「製造委託」に関する取り決めです。

一方でライセンス契約は、「知的財産(商標・特許など)」の使用許可に関する契約です。

たとえばキャラクターグッズをOEM生産する際は、ライセンス契約も必要になることがあります。

どちらも重要ですが、役割が違うことを理解しておきましょう。

 

契約書がないと困るのか?

契約書がないと、トラブル時に自分を守る材料がありません。

たとえば納期が守られなかったり、仕様と異なる商品が届いたりした場合、文書がないと責任追及が難しくなります。

また、不良品の交換や損害賠償も請求しづらくなります。

「信頼できるから契約は不要」と思っていても、後悔するケースは多くあります。

とくにはじめて取引する工場との間では、必ず契約書を交わしましょう。

当社の場合は、ユーザー様より契約書を欲した場合に限り、工場への打診させていただいていますが、実際のところ、契約書を交わす取引は年に数件程度です。数千万円、数億円規模の取引のケースで交わすことが多い印象です。

 

代行業者を通しても契約書が必要か?

代行業者を使う場合も、契約書は大切です。

工場と直接やりとりしない場合でも、代行業者との間で明確な取り決めをしておく必要があります。

業者によっては、OEM契約書のテンプレートや翻訳サポートを用意してくれるところもあります。

万が一、工場側とトラブルになったときに責任の所在を明確にするためにも役立ちます。

信頼できる代行業者を選ぶと同時に、契約内容も自分でしっかり確認することが大切です。

契約の主体は代行業者ではなく、工場と貴店ですよ。代行はあくまで通訳的な立場です。

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中国OEMの契約書で謳うこと(書式例)

中国OEM契約では、トラブルを避けるために、以下のような項目を明記した契約書を作成することが重要です。

日本語と中国語のバイリンガル契約書が推奨されます。

わたしの場合は、英語で1枚で済ませていますよ!

 

OEM製造契約書(OEM MANUFACTURING AGREEMENT)

本契約は、以下の当事者間で締結される。

委託者(甲):●●株式会社(日本)
受託者(乙):××工場有限公司(中国)

第1条(契約目的)
甲は乙に対し、自社ブランド製品の製造を委託し、乙はこれを受託する。

第2条(製造品の仕様)
製造対象の商品名、型番、素材、寸法、色、包装形態などを別紙で明記する。

第3条(製造数量と納期)
各注文ごとの製造数量、納期を記載する。遅延時のペナルティも定める。

第4条(品質管理と検品)
甲は製造品の品質基準を指定し、乙はこれに従い検品する。必要に応じて第三者検品も可能とする。

第5条(価格と支払い条件)
商品単価、為替レート、支払方法(例:T/T、前金・後金比率など)を記載。

第6条(知的財産権)
甲のブランド名、商標、デザインなどの権利は甲に属する。乙による転用や販売を禁じる。

第7条(不良品の対応)
不良品発生時の返金・交換条件、送料負担のルールを定める。

第8条(秘密保持)
両者は業務上知り得た情報を第三者に漏らしてはならない。

第9条(契約期間と終了条件)
契約の有効期間、更新条件、契約解除条件(違反時の通知期間など)を記載。

第10条(紛争解決)
紛争が生じた場合の解決方法(例:香港国際仲裁センター、または中国国内裁判所など)を明記。

署名欄
甲代表署名/日付
乙代表署名/日付

 

以下、それぞれの項目に対し、キャプションします。

 

 

詳しくみていきましょう。

 

第1条(契約目的)

何のための契約かを明示する条項です。

ここでは、OEM製品の製造を中国の受託者に委託することを明確に記載します。

契約目的が明記されていないと、後で工場側に「それは契約の範囲外」と主張される可能性があります。

例文:「甲は乙に対し、甲の指示に基づく製品をOEMとして製造させ、日本国内での販売用として供給を受けることを目的とする。」

 

第2条(製造品の仕様)

製造する商品の詳細情報を記載する項目です。

この項目は最重要レベルです。素材、寸法、色、パッケージ、ロゴの有無など、あいまいにせずすべて明記してください。

別紙で図面やサンプル写真を添付するのが一般的です。

細かく指定しないと「思っていた商品と違うもの」が届くことになります。

中国では“似ているもの”を納品されるケースもあるため、図面や写真の提出も必須です。

記載内容の例:

素材:ポリエステル100%

寸法:W20cm×H30cm×D5cm(±5mm)

色:PANTONEコードで指定

パッケージ:個包装・シュリンク付き

 

第3条(製造数量と納期)

発注数と納品までの日数を規定します。

「数量:1,000個」「納期:発注後45日以内」など、具体的な数字を記載します。

納期遅延時の対応(遅延金、キャンセル権)も併せて定めましょう。

以下、ポイントです。

  • 中国の大型連休(旧正月や国慶節)をまたぐと、納期が大幅に遅れることがあります。
  • 生産が遅延しても、契約書がないと補償を受けられない場合が多いです。
  • 日本側の販売計画に大きな影響を与えるため、厳格な納期管理が必要です。

 

第4条(品質管理と検品)

製品の品質基準と検品方法を規定します。

「不良率が1%を超えた場合は再製造」「検品は乙が自社内で実施し、報告書を提出する」など、品質管理の手法を記載します。

中国工場は日本より検品が甘い傾向があります。

検品方法を明確にすることで、不良品混入のリスクを最小限に抑えられます。

代行業者に検品代行を依頼する場合、その内容も別途記載しておきましょう。

オプション:

第三者検品機関(例:SGS、Intertek)を指定

不合格商品の返品条件

 

第5条(価格と支払い条件)

単価、総額、支払いスケジュール、通貨を明記します。

たとえば「商品単価:2.5USD」「支払い条件:30%前金、残金70%は出荷前にT/T送金」など、詳細に書きましょう。

また、前金を支払ったまま出荷されずに連絡が取れなくなるケースもあるため、残金支払いは「検品後」に設定するのが望ましいです。

さらに、為替変動がある場合は「為替レート確定日の基準」も記載します。

通貨: USD、CNY、日本円など

支払方法: 銀行送金(T/T)、PayPal(小ロット時)など

 

第6条(知的財産権)

ロゴ、デザイン、ブランド名の権利の所在を明示します。

「製品デザイン、パッケージデザイン、商標はすべて甲の所有物であり、乙は第三者に使用・販売・流用してはならない」など、明確に制限します。

ロゴやデザインが勝手に流用され、模倣品を第三者に販売されるリスクがあります。

中国語商標の登録もあわせて進めることで、さらに権利を強固にできます。

 

第7条(不良品の対応)

返品・交換のルールをあらかじめ定めておく項目です。

出荷後に「日本までの送料は自己負担で」と言われるケースもあります。

あらかじめ対応方法を記載しておけば、余計な交渉をせずに済みます。

  • 不良率が1%以内は許容
  • 超過分については返品・再製造
  • 送料負担の所在(工場側か日本側か)を記載

 

第8条(秘密保持)

取引内容や製造情報の漏洩を防ぐための条項です。

「両当事者は、本契約に関連して知り得た情報を第三者に漏洩してはならない」と記載。

OEMは企業の“商品戦略”そのものでもあるため、厳重な対策が必要です。

 

第9条(契約期間と終了条件)

契約の有効期間と、終了する条件を記載します。

たとえば「契約期間:2025年6月〜2026年6月まで」「更新は書面による同意が必要」など。

途中解約の条件(例:30日前に書面通知)も記載しておくと安心です。

 

第10条(紛争解決)

裁判や仲裁になった場合の取り決めを明示します。

「万が一紛争が生じた場合は、甲地の東京地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする」

あるいは「香港国際仲裁センターでの仲裁とする」などのように記載します。

中国の地方裁判所では日本人にとって不利な判決が出ることもあります。

できれば中立な地域(香港・シンガポール)での仲裁を選ぶのが安全です。

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中国OEM契約で注意すること

中国の工場とOEM契約を結ぶ際には、単に契約書を交わせば安心というわけではありません。

言語や文化、法律の違いから、日本では想定しにくいトラブルが起きることもあります。

ここでは、中国OEM契約で注意すべきポイントを具体的に解説します。

 

 

詳しくみていきましょう。

 

契約書の効力

中国で作成された契約書でも、内容によっては「法的に無効」と判断されることがあります。

たとえば「印鑑が押されていない」「署名が片方だけ」「記載言語が中国語だけ」などは要注意です。

契約書には、中国側の正式な法人印(公司印)と代表者の署名が両方必要です。

また、中国の裁判所で通用する書式や記述方法も確認する必要があります。

可能であれば、現地の弁護士や代行業者にリーガルチェックを依頼するのが安心です。

 

言語の違いによる誤解

契約書は日本語だけでなく、中国語(簡体字)を併記した「バイリンガル形式」で作成するのが基本です。

片方の言語だけで作成すると、解釈の違いが生まれた際に不利になることがあります。

特に、商標や製品仕様、数量などの数字や専門用語は誤訳が大きなトラブルを招く原因です。

翻訳の正確性も重要で、できればビジネス経験のある翻訳者に依頼しましょう。

どちらの言語が優先されるか(準拠言語)も、契約書内で明記しておくとトラブル回避になります。

 

合意内容の曖昧さ

「口頭で伝えたから大丈夫」「WeChatでやりとりしたから記録はある」という油断は危険です。

契約内容は必ず、数量・納期・単価・支払い方法・返品条件などを文書で具体的に明記してください。

たとえば「遅延時の対応」「検品基準」などは、細かく取り決めておかないと、後から泣き寝入りすることになります。

中国の工場側は、あいまいな記述を自分たちに有利なように解釈する傾向があります。

曖昧な言い回しを避け、数字と条件をはっきりと記載することが重要です。

 

相手の信用調査を怠らない

契約書を交わす前に、相手工場の実在性や信頼度を必ず調べましょう。

中国では、法人登録があっても実体のない「ペーパー企業」や、評判の悪い業者も存在します。

できれば現地に拠点を持つ代行業者を通して、企業調査(工商登記・過去の訴訟履歴など)をおこなうのが安全です。

アリババや1688で評価が高くても、実際の対応がずさんな場合もあるため過信は禁物です。

契約は、相手の信頼性を前提とした上で成立するという意識を持ちましょう。

 

トラブル時の対応先を決めておく

契約書には、トラブルが起きた場合の「準拠法」と「裁判地(仲裁地)」を明記しておく必要があります。

たとえば「本契約は中華人民共和国の法律に基づく」「香港国際仲裁センターを利用する」などです。

この部分がないと、トラブル時にどこで誰が判断するのかが不明確になり、解決までに時間がかかります。

また、裁判ではなく仲裁制度(Arbitration)を選ぶと、手続きが早く、外国人にも比較的公平です。

実務上は、香港・シンガポール・東京など、中立的な場所を選ぶのが一般的です。

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OEM契約のトラブル事例

中国の工場とOEM契約を結ぶとき、「契約書があるから大丈夫」と思っていませんか?

実際には、契約があってもトラブルが起きることは珍しくありません。

最後に、初心者が特に注意したいトラブル事例を3つ紹介します。

 

 

詳しくみていきましょう。

 

仕様と違う商品が大量に届いた

ある日本のアパレル事業者が、Tシャツの色と素材を細かく指定したにもかかわらず、届いた商品は微妙に違う色合い・生地でした。

工場側は「サンプルとほぼ同じだ」「色はロットごとに多少差が出る」と主張し、返品に応じませんでした。

このケースでは、契約書に「PANTONEコードによる色指定」「素材の構成比」を明記していなかったことが原因でした。

仕様のズレは小さく見えても、日本の顧客にとっては大問題になることがあります。

具体的かつ客観的な仕様書(図面や数値)を契約書に添付することが重要です。

 

支払い後に連絡が取れなくなった

新規の工場と初めて取引した日本の雑貨店が、前金50%を送金した直後から、連絡が途絶えてしまったという事例があります。

工場の住所に連絡しても電話がつながらず、メールにも返信がありません。

調べてみると、相手は実在しない「ペーパー会社」で、法人登録はしていても実体がありませんでした。

このケースでは、法人の信用調査や現地視察を怠っていたことが原因です。

契約の前に相手企業の実在性・過去の評判を必ず調べることがトラブル回避の第一歩です。

 

不良品対応でもめて関係が悪化

電子機器をOEMで製造したある事業者が、不良品率5%以上の商品を受け取りました。

日本側は返品・交換を求めましたが、工場は「検品済みで問題なかった」と主張し、対応を拒否。

契約書には「不良品の定義」や「責任分担」についての記載がなく、どちらの言い分も平行線となりました。

結果的に、再交渉が難航し、継続取引もストップしました。

不良品が出たときの対応方法(数量・送料・期限)を事前に契約書に書いておくことが不可欠です。

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まとめ

  • 中国OEMで商品を製造する際、契約書はトラブルを避けるための「最低限の備え」です。
  • 特にはじめての工場との取引では、仕様・納期・支払い・知的財産などを明文化することが重要です。
  • バイリンガル契約書や第三者のチェックを入れることで、より確実な内容になります。
  • また、契約書があっても、内容があいまいでは意味がありません。
  • 小規模な取引でも「契約の基本」を押さえて、安全なOEMビジネスを進めましょう。

ご質問、いつも歓迎です!本日もお読みいただき、ありがとうございました^^

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